新生児死

STORY6 出産から11時間後、突然の息子の死。「わたしと同じように、赤ちゃんを亡くされた方の力になりたい」と望むようになるまで。

プロフィール

望月麻生さん/1994年生まれ/スポーツインストラクター  
インタビュー時:新生児死から2年3ヶ月 
2017年:第一子出産 
2020年:第二子を生後11時間で新生児死 
2021年:第三子出産 
2022年4月4日:〜赤ちゃんを亡くされた方のグリーフピアサポート『天使ママサロン-桜のバトン-』設立
Instagram:https://www.instagram.com/sakurababy_mama/

#新生児死 #原因不明 #第二子

STORY

目の前で見た息子の死。まるで夢を見ているかのような感覚でした。 
あれから2年が経った今のわたし。そしてこれからのわたし。

出産を無事に終えほっとしていた矢先のことでした。医師からの宣告に、まるで夢を見ているかのような、そんな感覚でした。

当時のことを振り返りながら話してくれました。

夫の立ち会いのもと次男を出産しました。生まれた直後は夫がまず初めに抱っこし、その後に私のそばに連れて来てもらいました。この時は、出産を終えた安心感でいっぱいでした。私は、分娩後の処置が終わってから病室に移動となりました。その間、何度か看護師が私の元へきて「息子さんですが、ちょっと呼吸が不安定なので保育器に入っています」という報告がありました。私は産後のため離床の許可がおりず次男の様子を見に行きたくても行けない状況でした。不安ではありましたが、「ここは病院だし何かしらの処置をしてくれているから、大丈夫。生まれたばかりだし、そういう時もある」。そこまで深刻さを感じていませんでした。 

しかし、出産後8時間ほど経過した時に、病室のベッドで横になっていた私のもとへ血相を変えた看護師がやってきて「ご主人をすぐに呼んでください」と言われました。その時には既に次男は心肺蘇生されていたのだと思います。個人病院であったためNICUがある医大病院へ搬送となりました。 救急車の中で次男の心拍が止まっているのが、モニター越しに伝わってきました。搬送先の医大病院でも心配蘇生を試みていましたが既に施しようがない状態でした。出産した病院と転院した病院間では責任の押し付け合い、そんな雰囲気も伺われました。
次男が息を引き取ってすぐに医師からの説明があるわけでもなく、私はただただ横になって泣かない次男を見つめ、泣いていました。この間、病院側は家族の時間をあえてつくってくれていたのか、もしくは他の患者の対応で来れなかったのかは分かりませんが、急すぎる出来事にただただ現実を受け入れられずにいましたし、このような病院側の対応にも不信感をいだきました。 

その40分後くらいに医師から死亡が告げられ、死因は原因不明でした。看護師からは必要な手続きについての説明、葬儀屋を使用するかの説明がありました。その他は特に何も言われませんでした。出産を終えたばかりの私に看護師は、「ご出産された病院に戻ってください」と伝えてきましたが、次男の側にいてあげたいですし、離れ離れになってしまうのは嫌でした。病院側の他人事のような対応にうんざりしてしまいました。その後、出産した病院に連絡をすると、産後間もないので、2〜3日は入院をしてほしいと言われました。「私は次男といたい!」そう伝えると出産した病院は退院とさせてくれました。 

思い出の品は残したくない」と夫婦間ですれ違い

亡くなった次男を自宅に連れて帰って来ました。お別れ(火葬)まで、沐浴したり、次男と家族の時間をゆっくり過ごしました。 また、両親が葬儀屋の手配をしてくれたので、棺の用意や火葬場の予約などしなければならないものは準備してもらいました。死産届けの提出をするだけでも負担でしたので助かりました。

私が、次男の写真や家族との写真は残したいと思いカメラを向けると、夫は躊躇しました。「亡くなっている子どもの写真を撮るのはおかしい」と。また、夫はものも残したくないという気持ちも強くあり、写真や手形など思い出の物というものはほとんど残しませんでした。出産立ち会い時の動画も削除したいと望んでいました。きっと、次男の死をなかったことにしたかったのか、生まれたての次男も抱いていたので、「生」と「死」をこの数日で経験しなければならなかったことが、相当辛かったんだと思います。

しかし、私は次男との思い出の時間やものが何も無くなってしまう事が怖くて、数枚の写真と出産時の動画だけは消さずに今も残してあります。 

 

産後の気持ちと、過ごし方

今振り返ると、産後ハイになっていたと気づきました。

 産後は次男を失った悲しみや、悔しさもありました。しかしその気持ちを上回るくらいの「生まれた。やったー」という達成感も強くあったのも確かです。長男を育児しながらの妊娠生活と仕事との両立は大変な面も多くあったため、次男が生まれて来てくれたこと自体が満足と達成感の気持ちでいっぱいでした。

産後というのに産後ではありえないくらいの距離をランニングしに行ったり、とにかく激しく体を動かし、今考えたらありえないことです。産後はホルモンバランスの急激な変化があることは知ってはいましたが、振り返ってみると、あの頃は異常なくらいの産後ハイになっていました。

夫は、私よりも悲しんでいる様子でした。ただただ現実を受け入れたくない様子が伺われました。この時はコロナ禍の緊急事態宣言中であったために、夫の仕事は完全にステイホームでした。想像していた産後の生活とは一変してしまいましたが、夫も長男も自宅にいてくれたことで、悲しさがそこまで増さずに済んだのかなと思っています。 

自分の周りはたくさんの幸せで囲まれていることに気づきました

死産直後は、悲しいことにしか目が向かず、辛い、耐えきれない、負のスパイラルの日々を送っていました。子どもを失うという経験をして、人生でこんなにも悲しいことがあるのかと現実に打ちのめされ、自信や幸福、感情までも失った感覚でした。

しかし、日々の生活から小さな幸せに気づくことができるようにもなりました。
妊娠出産が奇跡的なことであり、妊娠出産は命がけであり、今自分が生きていることも当たり前ではないことを知りました。当たり前なこととして受け入れていたことが、実は奇跡の塊なんだということを学び、自分の周りにはたくさんの幸せで囲まれていることに気づきました。両親や家族の大切さ、「いのち」の大切さ、生きることとはどういうことかを考えるきっかけになったのではないかと思っています。

悲しみも怒りも後悔も喜びも感動も感謝も、全て自分の経験であり、私と共にあります。もちろん、このように思えるまでは時間もかかりましたし、家族をはじめ多くの方の支えがあってのことです。事実を認め、自分を許し、共に生きる、そんなふうに思えるようになったら、以前よりもずっと生きやすくなったような気がしました。

赤ちゃんを亡くしたお母さんのココロとカラダの両方からサポートしていきたい。

赤ちゃんを亡くされたお母さんのほとんどが、「産後」という自覚がないまま出産後を過ごしています。特に、流産や人工妊娠中絶手術をされた方、妊娠週数がまだ浅い方は、「自分が赤ちゃんを産んだ」という意識がない方が少なくありません。そのため、赤ちゃんを亡くされた悲しみに加え、産後のホルモンバランスや自律神経の乱れから、グリーフ(悲嘆)が長引いてしまうケースもあります。
また、赤ちゃんを亡くされた方の多くが「早く次の赤ちゃんが欲しい」と次の妊娠を意識しています。だからこそ、お母さんは、赤ちゃんが産まれてきた大きさや週数に関係なく、「産後」として意識して身体に耳を傾けてほしいです。

現在、自身のこれまでの経験を活かして、オンラインツールで産後の体と心を整えるピラティスを開催しています。赤ちゃんを亡くされた女性の中には出産後すぐから体型を戻したい、ちょっと運動がしたいと感じている方もいます。しかし、産後というと赤ちゃんがいる講座がほとんどなため参加しづらいと思います。そのため、私が開催しているこのピラティスは「赤ちゃんを亡くされたお母さん(天使ママ)だけ」を対象としています。
今後も天使ママの力になれるように活動していきたいと思っています。

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