死産・人工死産

STORY26 超音波検査で分かったわが子の障害。名前にぴったりでかわいい息子。

プロフィール

ほなっちゃん/1993年生まれ/看護師
2022年:第一子出産
2023年:第二子を妊娠16週2日で死産
インタビュー時:死産から1年6ヶ月

#頭蓋骨形成不全症 #頭蓋骨欠損 #脳瘤 #NIPT #出生前診断 #産後うつ #うつ病 #強迫性障害 #人工死産

NIPTの結果は陰性

妊娠6週目に心拍が確認でき、母子手帳も無事もらい安心していた矢先のことでした。妊娠10週目の健診で医師から首に浮腫があると指摘されました。とても不安で、夫婦で話し合い、NIPT※1を受けることになりました。NIPTの結果が出るまで約1ヶ月位かかると言われましたが、少しでも赤ちゃんの今とこれからを知るきっかけになればと思い受けることにしました。NIPTの結果は陰性でした。

※1:NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは、出生前検査認証制度等運営委員会によると、妊娠9~10週以降に、妊婦さんから10~20mlの血液を採取して、血液中に浮かんでいるDNAの断片(cfDNA)を分析する検査です。ダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3つについて、病気がある可能性を調べます。病気の重さや症状はわかりません。
出生前検査認証制度等運営委員会・NIPTとは

超音波検査で分かったわが子の障害

しかし、妊娠15週6日の妊婦健診の超音波検査は、その日ばかりはいつもより、エコーを当てている時間が長かったように思います。医師から言われたことは、「頭の形に異常があります」と。赤ちゃんに頭の病気の疑いがあるということでした。「頭蓋骨が2ヶ所塞がってません。そこから脳が出てきてます。診断としては、恐らく頭蓋骨形成不全症、脳瘤※2でしょう。このまま妊娠を続けることはできますが、生まれても数時間の命で抱っこをすることもできないまま亡くなるかもしれません。」ということでした。NIPTを受けて、しかも結果は陰性で安心していた矢先に、また医師からのお腹の赤ちゃんの異常を宣告され、頭の中が真っ白になりました。私の場合、数年前に腰椎椎間板ヘルニアで腰の手術をしました。そのため、自然分娩は難しく、局所麻酔(腰からの麻酔)は難しいということで、第一子の出産は全身麻酔下での帝王切開で出産しました。そのため、第二子の場合も同様に、正期産で分娩なら全身麻酔下での出産になることは決まっていました。もし、全身麻酔で分娩なら、麻酔から目が覚めなければ赤ちゃんを抱っこできない・・。少しでも息をしている姿を見たいけれど、その前に亡くなってるかもしれないということを医師から説明を受けました。今日か明日でどうするか(妊娠を継続するか、もしくは今回の妊娠の継続を諦めるか)を決めてくださいと言われました。
その晩、夫と話し合いをしました。私は、自然分娩できる大きさで産んであげて赤ちゃんを抱っこしたい、産まれた直後から触れ合いたいと。夫は私の体の負担のことを考えてくれていて、早い時期でお別れをしようということを決めました。
翌日夫は仕事を休み、一緒に病院へ行きました。産科外来の待合室で待ってる時間はものすごく長く感じ、幸せそうに妊婦健診を来ている妊婦さんや妊婦さんとそのパートナーの方々を見るのは辛かったです。そして、再度超音波検査をしてくれましたが、所見に変わりありませんでした。診察室に呼ばれ、先生からもう一度説明がありました。「どうしますか?」と言われ、涙を流しながら私は、「この子を諦めます」と伝えました。

※2 脳瘤:クリフム出生前診断クリニックによると、頭蓋骨の穴から頭蓋骨の中身が外に飛び出ている状態を言います。髄膜と脳脊髄液だけのものを「髄膜瘤」、脳組織が含まれる場合は「髄膜脳瘤」と呼びます。先天的に頭蓋形成の一部が正常にできなかったことで頭蓋骨に欠損部が生じ、その欠損部から中身が外に出てしまうのです。脳瘤は後頭部と鼻孔を結んだ線(いわゆる正中線)上に起こりやすく、発症数的に後頭部から頭頂部に多いのが特徴です。脳瘤は生まれつきできた頭蓋骨の欠損部から、頭蓋骨の中身が外に出てしまった状態の先天的な疾患です。10,000人の出生に対して1~2名程度の頻度と、比較的まれな疾患です。クリフム出生前診断クリニック・脳瘤

責めてしまう気持ち

その翌日に入院しました。(人工死産)処置前の超音波検査で「赤ちゃん、元気なのにね。。。」と医師に言われました。超音波検査を行なってくれたため、お腹の中で元気にしている赤ちゃんの様子を見ることができました。元気に動いている赤ちゃんを自分で殺してしまうんだと責めてしまう気持ちにもなりほんとに辛かったですが、最後に会えて良かったです。死産に必要な処置が始まり、まずラミナリアを入れ子宮口を広げる処置をしました。処置は、ほんとうに激痛でした。その日は、朝にラミナリアを入れて夕方に抜いて、また入れて終わりでした。次の日妊娠16週2日、朝に(ラミナリアを)入れ替えしてから、いよいよ促進剤の膣錠をいれました。徐々に陣痛となる痛みが出てすぐに、陣痛の間隔が5分になりました。また、追加で膣錠を入れ、そこから陣痛がさらに増し、破水。処置開始から約8時間で妊娠16週2日で110g18cmの男の子を出産しました。助産師が「産まれたよ〜!よく頑張ったね」と言ってくれました。息子はすごく可愛かったです。でも、息子には申し訳なさの気持ちも強く、何度も「ごめんね、ごめんね」と声をかけている自分がいました。妊娠中から、名前は決めていました。男の子なら、愛翔(まなと)くんと名前をつけようと夫と話していました。何回も「愛翔くん」と呼んであげました。。夫も普段、泣く姿を見せませんが、涙を流してました。助産師などの病院の配慮により、家族の時間をたくさんつくってもらいました。

できることは全てできた

出産前、助産師から「産まれたらしたいことありますか」と聞いてくれたため、抱っこがしたい、手形足形をとってほしい、お風呂に入れてあげたい、母子手帳に記入してほしい、家族で写真を撮りたい(上の子は入れなかったので撮れませんでしたが、後日ツーショットをとりました)など伝えていました。そのため、入院中に息子にしてあげたい、したいことは全てできたと思います。あとは、私は静かな空間が苦手なので、分娩中に流してくれていたオルゴールもありがたかったです。息子と一緒に退院し、自宅で1日一緒に過ごしました。家族みんなで川の字で寝たり、お話をいっぱいしたりしました。私の兄家族にも会ってもらって、息子への手紙も書いてくれました。みんなが息子をあたたかく迎えてくれ、息子につけた名前にピッタリだねなんて話していました。息子のための時間を多くの人たちと過ごせたことが嬉しかったです。

受け入れられてはいないけれど、前に進めている気がする

いっぱい息子の思い出話をするように意識しています。今でも息子が亡くなったことを受け入れられているかと言われれば受け入れられてはいないけど、少し前には進めているかなと思います。ただ、息子を亡くしたことで、うつ病と強迫性障害※3を発症し、今現在治療中です。この2つの症状は自分では気づくことができず、夫が私の異変に気づいてくれたからわかりました。物忘れがあるなとは自分でも認識していましたが、その程度や頻度もエスカレートしていたようです。また、スマホゲームは以前からしていたものの、ゲームに課金ををするようになったりしていたようです。

※3 強迫性障害:こころの情報サイトによると、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れず、わかっていながら何度も同じ確認などを繰り返すなど、日常生活にも影響が出てきます。意志に反して頭に浮かんでしまって払いのけられない考えを強迫観念や、特定の行為をしないでいられないことを強迫行為といいます。たとえば、不潔に思い過剰に手を洗う、戸締りなどを何度も確認せずにはいられないなどが挙げられます。
こころの情報サイト・強迫性障害

息子は私たちに何かを伝えにきてくれた

息子は、私たち家族に何かを伝えたかったのかなと思っています。息子の妊娠が分かったのが、実父が血液の病気のための骨髄移植を行う前日でした。その後、父の体調は順調に回復し、病気が寛解といわれたので、きっと父の病気は息子がすべて持ってかえるために来てくれたのかなとも最近は夫と話ししてます。

一人ではない。辛い時こそ閉じ込めず話してほしい

子どもを亡くすことは、本当に辛いことです。自分の気持ちと向き合うことがうまくできず、時間がかかります。子どもの死を受け入れるなんて、いつまで経って受け入れられない、そう思います。でも、私と同じ経験をした方2人とSNSを通して出会いました。出産予定日は違えど、同じ月に生まれる予定だったので3人でたくさん励まし合ってきました。この2人の方に出会わなかったら、もっと辛かったと思います。感謝しかありません。なかなか、自分の経験を話すなんて難しいかと思いますが、一人じゃないです。一人じゃないということを忘れないでください。同じ経験をした方がきっとたくさんいます。辛い気持ちや思っていることを閉じ込めず、話してみてください。

⚠️いのちのSTORYは、当事者の実体験を記しています。そのため、なるべく当事者の言葉をそのまま使用することを重視しています。
⚠️お子さまを亡くされたご家族が深い悲しみの中、他にお子さまを亡くされたご家族の力になれればという想いから、記事にご協力くださいました。ご家族のご経験やお子さまへの想い・気持ちを守るために、当サイトの内容や画像の無断転載・無断使用は固く禁じております。ご理解いただけますと幸いです


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