死産・人工死産

STORY27 この経験は一生忘れはしない

プロフィール

Fさん/1994年生まれ/医療職員
2018年:第一子長男出産
2020年:第二子次男出産
2023年1月:第三子三男を妊娠21週5日で子宮内胎児死亡による死産
2023年12月:第四子四男を出産
インタビュー時:死産後1年6ヶ月
#子宮内胎児死亡 #死産 #臍帯過捻転 #臍帯捻転

上の子2人の妊娠は順調だったのに

有難いことに、長男と次男の妊娠・出産は順調でした。そのため、今回の3人目もきっと順調に残りの妊娠生活を送るのだろう、そう思っていました。しかし、妊娠18週くらいに入った頃、胎動が少ない、胎動がはっきりと感じられなくて。上の子2人の時はこの頃ははっきり胎動を感じていたと思うのに、4年ぶりの妊娠だからかな、個人差もあるって聞くしなと思い、次の妊婦健診※1まで様子を見ることにしました。それから3週間後の妊娠21週の妊婦健診で、医師から「お腹の赤ちゃんの心臓が止まっている」と宣告されました。

※1 妊婦健診:厚生労働省によると、標準的な妊婦健診の期間は、妊娠23週までは4週に1回、妊娠35週までは2週に1回の頻度で妊婦健診がある
厚生労働省・妊婦健診Q&A

突然の入院・出産になり、私も家族もとにかく大変でした

お腹の赤ちゃんが亡くなってしまってから時間が経っている、母体への感染のリスクも考えられるので大きな病院へ転院し分娩をした方がいいでしょうと医師に言われ、救急搬送され、その日に入院となりました。当時、上の子たちは5歳、3歳でまだまだママっ子でした。普段、主人は仕事のため育児の全ては私の役目でした。突然、子どもたちは私と離れ離れになり、不安で夜間は眠れなかったようです。主人も慣れない子守りで相当大変だったようです。私はというと、入院翌日から分娩の準備のための処置が始まりました。亡くなった子どもを出産しなければならない、しかも普通の(元気に生まれてくる赤ちゃんと同様の経膣分娩)出産と聞いて、やるせ無い気持ちでいっぱいでした。赤ちゃんが助かるなら頑張れるけれど、赤ちゃんが亡くなってしまってるなら、あの陣痛にどう耐えたらいいんだろって不安と恐怖でしたね。分娩の処置が始まるまで、インターネットでずっと検索していました。なんで赤ちゃんは亡くなってしまったのだろ、働きすぎてしまったかなって自分を責めてしまったし、死産の確率を調べたらかなり低いのになんで私だったのだろうって死産の原因や同じ週数で死産された方のブログを読みあさったりと、ずっと検索魔になっていました。

助産師さんのあたたかな対応

自宅にいる子どもたちと主人の心配、そして亡くなったわが子を産まないとならないという恐怖と不安が強まる中、病棟の助産師さんはこのように声をかけてくれました。「明日から分娩の処置が始まるけれど、何かしたいことありますか?」と出産前にしたいこと、生まれた後にどう過ごしたいのかなどを聞いてくれました。また、産後は、助産師さん達の手作りの臍の緒ケースと手作りの産着を用意してくれました。「お母さんがしてあげれる事をしよう」とアドバイスを頂き、準備してもらったアップリケを手縫いで縫い付けることもできました。また、新生児室から一番遠い個室で入院期間を過ごさせてくれたりと、配慮してくれたことがとてもありがたかったです。元気に産んであげらなかった罪悪感と、妊娠中に仕事しすぎてしまったから、女の子がほしいと欲を言ってしまったから・・こうなって(死産)しまったのかなって自分を責めていましたが、助産師さんたちがこうしてわが子の誕生をお祝いしてくれて嬉しかったです。

死産の原因は臍帯過捻転

子宮内胎児死亡の原因は、臍帯過捻転※2によるものでした。原因が分かれば少しは気持ちが楽になるものかなって思っていましたが、やはり妊娠中、体を動かし過ぎたからかなって考えてしまうことも多くありました。退院後は、私と同じ境遇の方の経験を知りたい、その方々がどのようにわが子の死を受け止めているのか、今後どのように人生を歩んでいくのかを知りたいなって思い、「誕生死※3」を読んだり、ドラマ・コウノドリ※4を全部観ました。自分だけではないんだって思えました。命の大切さ、無事に生まれてきてくれる事がいかに有難いかを教えてくれた気がします

※2 臍帯過捻転:日本産婦人科医会によると、臍帯過捻転は、牽引、圧迫、捻じれに弱く、臍帯の血流障害が起きやすい状態にあるため、胎児発育不全の原因となることもあります。妊娠中の突然の胎児死亡の原因となることもあるが、過捻転による死亡は(特に胎児発育不全が先行しない場合)突発的に起きるため、予防策がなく、すべてにスクリーニングしておくべきか議論の余地があります。日本産婦人科医会・臍帯過捻転・過少捻転

※3 誕生死:引用「がまんしなくていいの。思いっきり泣きなさい」。出産前後に赤ちゃんを亡くした悲しみを13名の父母が実名で,ありのままにつづった小さな小さな命の物語。三省堂出版、2002年発行 三省堂・誕生死
※4 ドラマコウノドリ:https://www.tbs.co.jp/kounodori/

子どもたちのおかげ

出産後は悲しみで涙が止まりませんでした。でも、自宅に帰ると家族が待っていてくれて、特に上の子2人の存在がとても大きかったです。出産後、一度自宅に帰ることになりました。その際に、上の子たちに亡くなった子に会わせました。そしたら、「かわいいね」って言ってくれたんです。少しかわいそうな言い方になってしまいますが、お腹で亡くなってから生まれてくるまで結構時間が経ってしまったのと、まだ週数も少ないので小さな子どもが思う赤ちゃん像からかけ離れていて、怖いとかそんな言葉があるんじゃ無いかって思っていたのですが、そんな心配は全くなくて、かわいいって言ってくれたんです。嬉しかったです。退院して自宅に帰るとひとりの時は泣くこともありました。でも、子ども達が幼稚園から帰ってくると泣くにも泣けず騒がしいことが逆にありがたかったなって思います。時間が経つにつれて、(当時のようにとても辛くどうしようもない気持ち)楽になりました。それから、亡くなった子に弟ができて、男の子4人のママをしています。

最後に

死産を経験して、妊娠したら無事に生まれてきてくれるとは限らないんだなって思いました。分娩施設を選ぶ際も、自分のご褒美のためにとか、出産を楽しむという考えで選んだりするのも良いと思いますが、無事に赤ちゃんが生まれてきてくれること、そして産む女性も安全に出産できるよう病院を選んでほしいなと思います。

⚠️いのちのSTORYは、当事者の実体験を記しています。そのため、なるべく当事者の言葉をそのまま使用することを重視しています。
⚠️お子さまを亡くされたご家族が深い悲しみの中、他にお子さまを亡くされたご家族の力になれればという想いから、記事にご協力くださいました。ご家族のご経験やお子さまへの想い・気持ちを守るために、当サイトの内容や画像の無断転載・無断使用は固く禁じております。ご理解いただけますと幸いです

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