死産・人工死産

STORY4 大切なことは、自分を責めることではなく、次に繋がるように身体を大切にすること

プロフィール

Iさん/1990年生まれ
インタビュー時:人工死産後1年 
2021年:第一子を妊娠13週4日で無頭蓋症のため人工死産 
2022年:第二子妊娠、出産 

#人工死産 #無頭蓋症 #無脳症 #第一子 

STORY

妊婦健診のエコーで胎児に疾患が見つかってしまうなんて思ってもいませんでした。そう語るIさん。
当時のことを話してくれました。

「頭のかたちが少しおかしいね、小さいね」何かの間違いに違いない、そう信じたかった。

妊娠9週5日、妊娠が分かってから3回目の受診。つわり症状がひどかったため予定よりも早い受診となりました。経腟エコー後、医師からは「頭のかたちがおかしい、小さい」「本来なら丸くうつる頭が平になっているから、もしかしたら無脳症の可能性が高いね」と指摘されました。赤ちゃんの発育を確認するための超音波健診だと思っていたのに、まさか赤ちゃんに疾患が見つかってしまうとは思ってもいませんでした。目の前が真っ暗になり、どうしたらよいのか、つわりのため点滴を打ってもらっていた際、ベッドに横たわりながらひたすら「無脳症」について検索していました。携帯の画面が見えなくなるほど泣き続けました。1週間後の次の健診時には頭が丸くなっていたらいいね、何かの間違何かの間違いではないか、次の健診時にはきっとよくなっているよね、そう願わずにはいられませんでした。 

医師や助産師のおかげで自身を責めずに事実を受け入れられました

妊娠10週、当時コロナ全盛期。本来ならば、外来受診は私一人だけでしたが、病院にお願いをして夫も同席となりました。不安と恐怖のまま診察が終わり、結果はやはり無脳症で間違いないと告げられました。医師は無脳症の原因やこれまでの自身の生活には一切触れてこず、無脳症という疾患について丁寧に説明してくれました。これまで、赤ちゃんの疾患は自分のせいだと思っていた私でしたが、医師の説明で救われました。また、医師は何か質問はないか、どうしたいか、出産は好きなタイミングでいい、などと私たちに選択肢を多く与えてくれました。 

妊娠11週1日。もしかしたら最後の健診になるのかなと思い、勇気をだし医師にこう伝えました。「エコー写真はたくさんもらってきてね、と夫から言われました」と伝えると医師は笑いながら、たくさんエコー写真や動画を残してくれました。外来看護師は普通の妊婦の方と同じように母子手帳に記入してくれました。このような医師や助産師の接し方や、エコーや検査も普通の妊婦さんと同じように接してくれたことで、早い段階から夫と共に悲しい事実を受け入れつつも、赤ちゃんと残された時間について向き合えるようになりました。 
「残りの時間は、家族3人で仲良く過ごしたいな」「楽しい時間を過ごしたいからつわり落ち着いてね」と 息子に会えることを励みに過ごしていました。

わが子になにかプレゼントをしたくて 

妊娠入院前の最後の健診。エコー上で元気に動く姿を見ると愛おしくて涙が止まりませんでした。「本当にこれでよいのか。」と答えのない問いを自問自答していました。わが子に何かプレゼントしたいと折り紙でお花や折り鶴を折り、肌着や帽子を手縫いで作りました。息子にできることはすべてやってあげたい。そんな想いでいっぱいでした。 
翌日に控えている出産のための処置を想像するだけでも恐怖でいっぱいだったけれど、不思議と赤ちゃんはもっと怖くて苦しいんだ~なんて思ったら、自然と勇気わいてきました。 
ただただ、早く会いたいという気持ちにもなりました。 

出産は想像をはるかに超えて辛かった 

コロナ渦で立ち合い出産ができなかったため、当日は前処置からひとりで絶えなければならないことはわかっていましたが、ラミナリアの処置は毎回激痛で、何度も泣き叫びそのたびに夫に電話で励ましてもらっていました。痛みと気持ちが落ち着くまでずっと。痛みが増してきて、病室のベッドで一人でもがき、やっとナースコールに手が届き、押すと、「陣痛の間隔はいかがですか」。陣痛の間隔も分からなくらいの激痛になっていたためにすぐに分娩室へと移動となりました。 
助産師の内診も、これまた激痛。陣痛の波に合わせて助産師の掛け声とともに体の向きを変えるとツルんと生まれました。胎盤をだすなどの後処置も激痛でした。13週4日で出産となりました。

息子と過ごせた時間は家族の宝物 

出産を終えると同時に夫が病院へ到着しました。やさしくて心配性の夫、私の顔を見ると手を握り抱きしめてくれました。泣いて、笑って息子と三人で過ごせた時間は本当に幸せでした。息子はエコー写真で見たままの姿で、頭の骨はやっぱりなかったけれど、とってもとってもかわいいわが子に変わりありませんでした。 
入院中はコロナ渦で面会もできず寂しい日々を過ごしていましたが、義母から素敵な花束が届いたときは、殺風景な病室が一気に明るくなり、私の心も穏やかになりました。 
人工死産後は、医師の指導通り2回生理を見送り、予防の為処方された葉酸を内服し第二子を比較的早い時期に授かりました。妊婦中はとにかく不安の連続でした。2022年1月、無事第二子を出産しました。現在、地上に息子はいないけれど第二子と家族4人で幸せに暮らしています。 

息子がお空へ帰ったこの経験を通じて、同じような経験をされた方にメッセージを送りたいです。

私たちを本当の意味で家族にしてくれたと思っています。 
妊娠出産は奇跡の連続で、また私たちが今生きていることさえも貴重なものだったと感じています。無事に大人になることがどれほどのキセキの連続であるかを教えてくれました。家族を大切にすることは、自分の身体を大切にすることでもあり、生活習慣を見直すきっかけを与えてくれたようにも思っています。 
無頭蓋症、無脳症の原因とされるものは諸説ありますが正確なことは分かっていません。 
原因の1つとして葉酸不足が挙げられていますが、葉酸をきちんと取っていても起こることもあります。 
ただ、妊娠前から葉酸を摂取することでリスクが下がるといわれていることも事実なので、妊娠前から葉酸をしっかり摂取して自分の身体を整えてから赤ちゃんを迎えることが大切だと思います。 
亡くなったわが子は私達夫婦に大切なことを教えに来てくれたんだと思っています。 
1/1000の確率と言われている無脳症、なんで自分がと思いました。私のせいで…と自分を責めることも多々ありました。 

でも大切なことは自分を責めるのではなく、次に繋がるよう自分の身体を大切にすること、妊娠出産、そして無事に育っていくということは当たり前ではなくてキセキの連続なんだよとわが子が教えてくれたと思っています。 

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